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第38話

字幕が一文字も出ていない動画を、AIは「出ています」と答えた話

困ったこと

30秒の縦長ショート動画を、原稿づくりから声・映像・音楽・字幕まで全部AIで作る流れを組んでいた。最後の工程が字幕の焼き付けだった。専用の機能に「この日本語フォントを使え」と指定して、テロップを載せた。

自分では出来上がりを目で見られないので、画像を読めるAIに「字幕は出ていますか」と尋ねた。「出ています」という返事だった。そのまま人に見せたら、一文字も入っていなかった。

原因は地味だった。指定したフォント名が無視され、日本語を持たない別のフォントに勝手に差し替えられていた。文字を描こうとしたが、描ける形が一つもなく、何も描かれないまま完成していた。手がかりはあった。字幕なし版とファイルの重さがぴったり同じだったのだ。何も足されていない証拠が、最初から目の前にあった。

どう解決したか

フォントを「名前で指定する」のをやめ、「置き場所を直接指す」別の機能に切り替えた。名前で呼ぶと、途中で誰かが解釈してすり替える余地が残る。現物を指させば、すり替えようがない。

同じ考え方が、もう一つの悩みも解いた。字幕のタイミングが、後半になるほどズレていく。理由は、字幕を「映像の場面の切れ目」に合わせていたことだった。けれど本当の時計は、ナレーション音声のほうにある。音声から発話の区切りを機械で聞き取って実際の時刻を測り、その時刻に映像の長さと字幕の両方を合わせ直した。全部そろった。

何が変わったか

「AIに確かめさせる」が万能ではないと分かった。見えていないものを、見たと答えることがある。だから確認は、言葉の返事ではなく数字で取りにいくようにした——ファイルの重さを見比べる、音声から時刻を測る。

そして基準を決めるときは、いちばん動かないものを選ぶようにした。映像の長さは後からいくらでも伸び縮みするが、喋ってしまった音声は伸び縮みしない。ズレを一つずつ直すより、「何に合わせるか」を変えるほうがずっと早かった。

<details> <summary>▶ 技術的にどう作ったか</summary>

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